今回は、打順の話をしたい。
主役はこの男、そう平田良介である。
現在のドラゴンズ打線、首脳陣がキャンプ中から決めかねていたのが2番打者である。
練習試合ではアルモンテ選手や平田選手、その前には高橋選手や福田選手も試していた。
昨シーズン2番の経験もある大島選手は、今年はずっと1番として起用されており、開幕戦も1番でのスタメンが濃厚だ。
さて、2番打者として起用すべきはどの選手であるか。
筆者の答えは、平田良介一択である。
いや、正確に言えば、平田選手が1番に入るのであれば2番は誰でも良いのだが、現状大島選手が1番に固定されている以上、2番は平田選手一択となる。
理由は、平田選手の打撃スタイルにある。
ご存じの通り、平田選手は出塁率が高く巧打力も高い上に、長打を打てる魅力のある選手だ。
但し、打撃を見ていると「ヒットの延長がホームラン」という打者ではない。
ホームランを打つときは、その大半が大きなあたりを狙って打っている。
それ故、ホームランを狙っている場合、露骨にスイングが粗くなる。
(ニュアンス的には、粗いよりも荒いの方が近いかもしれない。)
一番の長所であるはずの選球眼も著しく低下する。
選球眼が良い打者なのに悪球打ちのホームランが多いのはそのためだ。
もちろん、場合によってはホームランを狙う打撃をしても良いのだが、その割合が多くなっていくと、平田選手の能力を最大限活かせなくなっていくと感じる。
平田選手が2番に入らない場合、首脳陣は平田選手を6番あたりの下位打線で起用しようとしている。
当然だが、下位打線になると後に捕手・投手と打順が続いていくため、必然的に平田選手の意識が「出塁」よりも「ホームラン」となり、「大きなあたりを狙う」打撃スタイルとなりやすい。
練習試合でも、下位打線に入った平田選手の打撃は実に荒かった。
一方で、平田選手を1番や2番で起用すると、「出塁をする」という役割や「ランナーを進める」という役割が鮮明になる。
そうなると、ここが平田選手の凄いところなのだが、類まれな選球眼や見事な流し打ちを披露して、その役割を全うする。
象徴的なのは2018年シーズン。
主に1番を務め自己最高の打率.329を記録したシーズンだが、長打を狙う打席が少なく、流し打ち主体で活躍し、ライト前ヒットならいつでも打てるという素晴らしい状態の時があった。
高校時代の成績やその体格から、「制約」を設けずにフリーで好きなように打たせたほうが良い打者、という印象を周囲に与えがちな平田選手。
だが実際は、「役割」という名の「制約」が最も必要な打者だと感じる。
もちろん、2番に入るからといって長打を捨てるわけではない。
2番でもホームランを狙う打席があっても良い。
ただ、自身の強みを捨ててまでホームランを狙う打者にはなってほしくないのである。
平田選手も今シーズンに向けて「長打を増やしたい」旨のコメントをしている。
それはもちろん大切なことであるが、方向性を間違ってはいけない。
2018年の打率.329・本塁打9本をベースとして、
目指すは、打率.280・本塁打20本ではなく、打率.329・本塁打15本である。
もう一度言い方を変えて言おう。
目指すべきは、いわゆるスピードフォルム平田良介からパワーフォルム平田良介への転換ではなく、スピードフォルム平田良介を維持した上での本塁打の積み増しである。
ちなみに、平田選手と全く逆の打者が京田選手である。
2番などに置いて「制約」を与えると、途端に打撃が縮こまり選球眼の悪さが顕著に表れる。
彼は「フリースインガー」として、下位打線で初球から気持ちよくバットを振る方が今のところ合っている。
また、同じく2番候補として起用されているアルモンテ選手だが、こちらは2番でも3番でも下位打線でも、特に関係なく自分のバッティングをするであろう。
平田選手が出場しない場合は、2番でも面白いと思う。
長々と書いてしまったが、結局のところ「2番は誰か」というよりも「平田選手を何番で起用するか」の方がドラゴンズにとっては重要なのである。
平田選手には多彩な能力があるため、なんとなく”何番に置いても活躍しそうだ”と首脳陣が考えているのであれば、それは危険である。
だが、先週の練習試合を見て、この心配は杞憂に終わりそうだ。
全試合2番スタメンは平田良介。
鎖を纏った平田選手から、徐々に荒さが消えている。